【レビュー】夢か現実か?気持ち良い混乱。「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」【評価】★★☆☆☆
夢で見たことと、現実の区別がつかなくなることがある。
<嫌いな友達が転校してくれて喜んだ夢を見たあと、学校へ行ったらその子は普通にいてガッカリした。>とか、<自分の好きな女の子と両思いになった夢を見て、それを現実と思い込んで次の日話しかけて大恥をかいた。>とかそういうような感じだ。
小さい頃見た夢は長かった。
夢で過ごした時間が長い分だけ、あれが現実の時間では無かったなんて信じられなかった。
すっかり、本当の生活の一部だったと勘違いしていたのだ。
最近では、そんな夢を観る機会はとんと減ってしまった。
「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」
「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」はそんな多感な時期を過ごす高校生女子、森川ココネ、の見ている夢と現実が混ざりながら展開されるロードアクションムービーである。
母親のいないココネは、どことなく男らしい性格の女の子。
お母さんの秘密をめぐる陰謀に巻き込まれ、田舎から東京へと、友達の少年と共にタンデムバイクで駆け抜けていく。
すべての過程が夢と現実パートを交互に描写しながら進んでいくのが面白い。
意図的じゃないのかもしれないが、このアニメ映画では夢のパートと現実のパートの描写にそんなに差が無い。そのせいで映画を見ていると、どっちがどっちなんだろうと、少し疑問が浮かぶ。
例えば、高畑勲監督の「おもひでぽろぽろ」では夢のシーンはパステルカラーと少女漫画のような誇張されたタッチで描かれる。それに対して現実のシーンはリアルタッチで、写実的な色合いで描かれ、非常に明確に違いがわかる、
おそらく夢と現実の描写を激しく変えない、この描写方法は神山健治監督が意図的に行ったのだと思う。
映画の中では夢の中で行ったことは、全て現実にも反映されることが冒頭で示される。なので、観客は夢の中で行われる、ロボットバトルや、スリリングなアクションを見ている間、これは実際には現実で何が起こってるんだろうと、思いながら観る。
その体験が子供の頃の夢と現実の混乱を思い出させてくれて、なんだか楽しい映画であった。