【レビュー】湊かなえ「母性」を読んで
先日、名古屋へ帰省した帰りに新幹線の中で読むために購入した文庫本、湊かなえさんの「母性」を読み終わりました。
たくさん平積みしてあり、書店員さんのポップも飾ってありました。
多分、この著書の小説を読むのは一気に読み切って感動した「告白」以来かなぁ。
あれは刺激的内容だった。
先生が生徒にジワジワと復讐をしていく話で、暴力をつかわず、精神的、生理的に気持ち悪い方法で復讐を淡々と遂行するさまにゾワゾワします。
さて、「母性」についてですが、この小説にはとくに悪い人が出てくるわけではないのだけど、それぞれの人が良かれと思ってしたことが負の連鎖を産んで泥沼化してしまう、その悲劇を追想していくような形式のお話。
もう起こってしまった話だし、ましてや読者の私に悲劇は止められないので、モヤモヤしながらもうこれ以上悪いことは起こらないで、と読む。
そんな体験でした。
私は常日頃から誰かの言うことは言葉のまま受け取るべきで、あれこれバックグラウンドを想像するのは危険だと言っているのですが、正にそのことについて描かれたような小説だなと思いました。
登場人物は何人かいて、女子高生の転落事故についての新聞記事が気になる高校の女教師、娘の事を溺愛していたのに自殺未遂をされてしまい戸惑う母親の綴る日記、自殺未遂をした女子高生の追憶、三つの視点の物語が交互に描かれます。
最後にはちょっとした驚きとともにいろいろ繋がってスッキリします。ドロドロした話だけど、光を感じさせるよい終わり方だなと思いました。